桜絨毯

穏やかな生活

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穏やかな生活、地に足のついた、常識的な生活。
それが果てし無い檻に思えた。
どこまでも続く、優しさと常識という柔らかい縄に絡めとられた、見えない檻。




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また朝になってしまった。

数ヵ月後に卒業試験、国家試験をひかえる「受験生」は最近勉強もせず本ばかり読みふけっている。
ちょっとだけ、寝る前に。が、気がつくと東の空は明らみ始め、ここで寝てしまえば朝は起きられないと思えば結局そのまま起きていることとなる。
今日も早い。





実習期間が終了しても、自分の担当していた患者さんが退院するまでは様子を見に行くようにしている。
他科の実習があるので、もちろんできる範囲でちょっと顔を出すだけなのだけど、それでも一度受け持ったなら経過は気になるものだし、何より、彼らの笑顔が見たい。
そうやってちょこちょこ顔を出すうちに、一ヶ月間の実習中に誰一人退院することのなかった私のチームの患者さんも、一人二人と退院されて行き、3月の末には2人を残すのみとなっていた。
診察しながら。
「○○さん、私明日から春休みで、しばらくここに来なくなるんです。また4月に、と言いたいところなんですが、その頃には退院していていただかないと。」
「そうだなぁ、悪くもならないんだけど、よくもならねぇ。でも今度は外来で会いたいなぁ。」
今年度の実習が始まる前に確認すると、お2人とも退院されていてほっとした。
これで、全員、退院。
そう思っていたのに、棚を見ると見慣れた名前のカルテが。
一か月前、やっと退院されたおばあちゃんだった。
いつもニコニコ癒しだったおばあちゃんは、ぐったりとして生気が全く感じられなくなっていた。
経過が長い病気というのは、良くなったり悪くなったりを繰り返すもので、このおばあちゃんの場合もサイクロイド曲線を繰り返しながら、だんだんと弱っていく、そういう病気。
それでも病勢が落ちつけばおうちで過ごしていただくのだが、入退院を繰り返すうち家にいる時間より入院期間の方が長くなってきた。
そして、今回の入院。
次の退院は難しいだろう。

檻の中から自分を眺めていた。








新歓に顔を出す。
一年生に5年前の自分の姿を重ねる。
私もこんな風に考えていたんだろうか。
後輩たちが必死に明日もおいでよと勧誘している横で、まあ、他もいろいろ見ておいでよ、色々まわって御馳走してもらっといで、この時期しかないんだし、うちも他もいいことしか言わないから適当にあしらっとけばいいさーと言えば、ちょっと先輩真面目に勧誘してくださいよと怒られる。
仕切りも幹事もすべてから解放されれば勝手なものである。
私がしゃべった一年生たちは、皆再受験だのなんだので、新歓慣れしていた様子。
年齢を聞けば何だ、同い年ですかと子供のころのアニメ話で盛り上がってしまった。
まったく気楽な新歓、まったく気楽な六年生。


今週末はちょっと春を訪ねて歩きたい。
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by 2pinoko | 2008-04-11 06:22 | 出会い。
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