おじちゃん

「おじちゃん おじちゃん!」





もう97になるその老人の手をさすりながら 私は何度も呼びかけた。






「今は2日前からのお薬が効いているみたいで ずっと朦朧としてるんです。」


「そうですか・・・。痩せてしまって・・・何かちょっとでも食べてくれるといいのだけれど」


「こういうときはどうするのがいいのでしょうか・・・。これでもね、オムツ替えたりするときは引っかいてきたりするんですよ。でも、いつもみたいな怒鳴り声がないんです。」


「私が来るといつもは機嫌がよくなるんですよね。呼びかけてもわからないみたいだし・・・・もともと細い人だけれどこんなに痩せちゃって。」


「ええ、お話は聞いてますよ。ぴのこさんが来ると怒鳴らなくなるって。今度はいつ帰ってくる、あいつは医者になって戻ってくるんだ、そうしたら僕が病院を作ってやるんだ、何年後だろう、あと何年だろうって。」


「あはは・・・。そんなこと言っていましたか。
私はおじちゃんにとって孫のようなものですから。」


「あいつは自分の孫なのだと そう言っていますよ、いつも。」








頑固 我が儘 自分勝手 
誰もが手を焼く偏屈じいさんが毎日入れ替わり立ち代りやってくるヘルパーさんにそうやって語っている様を思い浮かべると 涙があふれた。
ヘルパーさんに答えようとして それは言葉にならずただ口から漏れる声になった。
ますます小さくなったベッドの上のおじちゃんを見て涙が止まらなかった。
 
血の繫がりのない小娘を 僕の孫なんだと いつもの椅子に座って語っていたのだろうか。






















自分のアパートに戻る直前 連絡があった。
ほんの少しだけれども食べ始めたという。
話も出来るようになってきたと。




安心して 新幹線に乗った。












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上の文章は9月19日に書いたものです。

投稿するのを忘れていたようで。



おじちゃん 今はお気に入りの鱠を毎日食べているって。

今月また、会いに行くからね。
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by 2pinoko | 2005-10-01 00:00 | こんなことがあった。
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